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2023/10/31
BIM

Archifuture2023

こんにちは。
株式会社SEEZの福池です。

先日の『Archifuture2023~generativeな時代~』のレポートです。
今後必須になるであろうAI関連の話は大変興味深く聞かせていただきました。
ありがとうございました。

ということで、セッションごとに感想をまとめてみます。
少々長いですが、良かったご覧ください。

はじめに

 今回のArchifutureは、副題をジェネレーティブと銘打っているだけあって、AI絡みのセッションが多かった。特に昨年までと大きく異なると感じたのは、2023年に大きなムーブメントを起こしたChatGTPをはじめとする大言語モデルや、MidjourneyStablediffusionなどの画像生成AIの活用が、非常に具体的な形で発表され始めていることだ。

 インターネットの始まりが情報の民主化ならば、AIの普及はテクノロジーそのものの民主化なんではないかと思わされた。 元来高度な技術を要する作業や、特殊な技能によって支えられてきたモノづくりが、 AIや高度な工作機械の登場によりその敷居が非常に下がったといえる。

創造性の解放
コンピュテーション×ファブリケーションが実現する自由な建築

秋吉 浩気 氏[建築家 / VUILD 代表取締役CEO]

今回の特別講演では、そんなサービスを展開している、VUILD代表でメタアーキテクトの秋吉浩気(あきよし こうき)氏の話が聞けた。大学在学中に1台の木材加工機と出会い起業し、現在は建築をも手掛けており、マルチに活躍されている。

VUILDでは木を使ったサービスを展開されていて、だれでも簡単に木製プロダクトを造る経験をできるようになっている。設計するだけで終わらずに、造るところまでできるというのは非常に面白い。
熟練の大工になるには長い期間の”修行”が必要であるが、 今や小学生でもツールと機械が使えれば、完成度の高いプロダクトを短い期間で世に送り出せる環境が整っている。
また、自分で機械を購入せずとも、クラウドサービスとしてAIやソフトウェアが提供され、見積、制作までワンストップで依頼できるサービスまで登場している。 時代の変化とともに、求められる職能も確実に変わってきているのである。

魅力的なプレゼンテーションから私が感じたことの一つとして、 世の中にテクノロジーはたくさん転がっているし、情報もたくさんある、だけどそれを使って、人と人が協力し、手を動かして何か”造る”というところまでやることが大切なんだと再認識させてもらった。

https://vuild.co.jp/

ピータークックが語る未来のテクノロジー
1950年代から今日まで

ピーター・クック 氏[建築家 / アーキグラム創設者、クック・ハフナー・アーキテクチャー・プラットフォーム[CHAP] ディレクター]
聞き手:
今村 創平 氏[建築家 / 千葉工業大学 創造工学部 建築学科 教授]
池田 靖史 氏[建築家 / 東京大学 大学院工学系研究科建築学専攻 特任教授 / 建築情報学会 会長]

今回ピータークック氏の基調講演を聞けたことは非常に幸運だった。 クック氏は1961年に結成した建築家集団アーキグラムのメンバーの一人である。 建築界のレジェンド的存在と言って差し支えないだろう。

御年87歳とのことだが、聡明でチャーミングなトーク。そして動画からでも伝わるエネルギッシュさ。まったく老いを感じさせない姿に驚かされた。

歴代の作品を交えながらインタービューは進んでいき、60年代から最先端のテクノロジーを取り入れた作品たちの生い立ちを聞くことができた。 テクノロジーはそれを使って実践してこそモノづくりだ。という話が出てきたときに。 秋吉氏の言葉とも少し重なるところがあった。AIや先端技術を使った作品だったとしても、必ずそこには自分で造ってみるというチャレンジがあり、試行錯誤がある。そのプロセスも含めて素晴らしい作品の礎となっているのだろう。

哲学的な対談の内容は正直私には難しいところも多く、すべてを理解など到底できなかったが、この話を聞く体験自体が意味深かった。

クック氏のチャレンジはまだ続いており、雑誌の企画で「新しいプラグイン・シティ」を製作中のようだ。これからの活躍も非常に楽しみである。

Archifutureは技術に傾倒するのではなく、こういった企画を行ってくれるのがうれしい。
運営委員の方々には感謝である。

生成AIや大規模基盤モデルの特徴と建築分野への応用

川原 圭博 氏東京大学 大学院工学系研究科 教授]

情報ネットワークの専門家である川原圭博氏のプレゼンテーションでは、話題沸騰のLLM(大規模言語モデル)の概念について聞くことができた。

機材トラブルで、建築分野への応用の部分がなかったのは惜しまれるが、話題の技術の生い立ちについて聞けたことは貴重である。 LLMとは、簡単にいうと

**「とんでもない量の言葉を覚えていて、話しかけるとなんでも答えてくれるヤツ」**だ。

どれくらいとんでもない量かというと、1000億パラメータを超えるものがLLMと呼ばれる。 有名なChatGPT3のパラメータ数は、3000億(厳密には3000億トークン)にも及ぶ。

従来からあった自然言語処理の技術に加えて、トランスフォーマーというモデルが登場したことによりプロセスにブレイクスルーが起きた。また、近年のコンピュータの高性能化によって、超大量の学習を行うことができるようになった結果、急速に大言語モデルの開発が進んだのだ。 OpenAIは1枚300万円もするグラフィックカードを1万枚以上保有しているとか…凄.…。
一方で日本の国家機関では100枚程度しか保有していないとか。これでは差が開くばかりなことは明白である。

そしてこういったモデルに対して強化学習を行うことが可能だ。 例えば、建築基準法や条例などのチェックや、デザインのメソッドなどを学習することによって、ある時には人間を凌ぐパフォーマンスを発揮するツールへと進化する。 数年後人間の仕事が奪われるといわれているのは、こういった類の学習で片が付くような仕事だろう。 図面を書いたり、法規をチェックしたり、そういったことは近年中に省力化されると予想できる。実際に建築基準法を学習させたモデルはサービスとしてすでに存在している。

そんな便利なAIだが、一定の危険性もはらんでおり、注意して使用する必要がある。 川原氏が挙げていた4点が以下だ。

  • うそ
  • バイアス
  • データ漏洩
  • 人が騙される

例えば、上記について「ChatGPT」に聞いてみたところ

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LLM(Language Model)を使用する際には、以下の注意点が重要です:

■うそ
LLMは入力データに基づいてテキストを生成するため、
誤った情報や嘘の情報を生成する可能性があります。情報の信頼性を確認し、
適切なコンテキストで使用することが重要です。

■バイアスがかかる可能性
LLMは訓練データから学習した情報を反映するため、バイアスが存在する可能性があります。
バイアスのある情報を生成することがあるため、注意して監視し、
バイアスの影響を軽減するための対策を取る必要があります。

■データ漏洩
機密情報や個人情報がLMMを介して漏洩するリスクがあります。
データの取り扱いに関する最善のセキュリティ実践を守り、
機密情報を送信しないように注意が必要です。

■人が騙される
LLMを使用して生成されたテキストが人々を騙す可能性があります。
フェイクニュース、詐欺、詐欺的な情報の拡散など、社会的な影響を懸念する要因です。
情報の正確性を確認し、倫理的な使用を守ることが大切です。

これらの注意点は、LLMを使用する際に倫理的かつ責任ある方法で取り組むために重要です。
データの品質とセキュリティ、バイアスの監視、誤情報の拡散の防止など、
これらの問題に対処するためのガイドラインを設けることが推奨されます。
また、適切なコンテキストでの使用と教育も重要です。
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とまぁそれっぽい感じで返してくる。だが、この文章もまたこの注意点を踏まえたうえで読まなければいけないのである。

使う人間の専門分野の事柄であれば

「ふふーん、まぁた適当なこと言ってるな」

で片付くものが。 いざ知らない分野のこととなると、AIが書き出したことがとたんに真実に見えるものである。

便利ではあるが、こういった危険性もあることを重々承知して、皆様にも是非使ってもらいたいし、私自身も積極的に活用していきたい。

AIと建築設計~新時代の幕開け~
底上げされる能力、拡大する創造性、変貌する設計者

横関 浩 氏[建築家 / フローワークス 代表]

最後に聞いたのは名古屋の設計事務所「フローワークス」代表の横関浩氏のセミナーだ。 こちらは具体的にChatGPTと画像生成AIを使って設計で何ができるかというものだった。

建築や都市計画のデザインをするとき、コンセプトを頭の中や文字に書き出すと思う。次は手を動かして絵をかいたりモデリングが必要だった。 もちろんそれはとても大切なことで、私は必要なことだと思う。

では画像生成AIを使う意義や優位性は何か。 一番はスピードと量だろう、人間の作業では到底不可能なスピードでそれなりのクオリティの結果がポンポン出せるのはAIならではだ。 やってみたことがある人ならわかるが、自分が思いもつかないような結果が出てくることもある。
試しに5分程度で建築パースを作ってみた。

このパース、細かく見ていくとおかしなところは無数にある。だが雰囲気が出ている。
今は部分的に再修正できるツールもあるし、多少時間をかければ修正は十分に可能だ。
無料でできるツールもいくつかあるので、ぜひトライしていただきたい。
ちなみにこの画像は Adobe Fireflyで作成したものです。

そんなAIだが、BIMとはすこぶる相性が良いと川原氏は言う。 むしろ、AIと組み合わせるならBIMでなければいけない。 従来の2次元や3次元の設計では、真価を発揮できないと。

現在は画像を解析して3Dモデルに変換するのは単体のツールでは難しそうだが、これも時間の問題だろうし、そもそも画像ではなく、3Dモデルをプロンプトで作成できるようになってきているので、BIMもそれに倣っていくのは時代の流れとしてはごく自然なことだろう。

逆に、こういったものを全く取り入れなかった時のことを考えてみてほしい。
使っている人と使っていない人。差はどうなるかを。

まとめ

人間がやるべき仕事とは何だろうと考えさせられる回であった。 テクノロジーがなかった時代に逆戻りすることは絶対にない。 AIは時代の変化のスピードを指数関数的に加速させていて、ついていくことは人間の脳みそでは無理かもしれないが、そこすらもAIがカバーしていくのだろうか。さて、BIMの普及はAIで加速するだろうか。 BIMが当たり前の時代、シンギュラリティはもう目の前まで来てるかもしれない。